母のこと その5

今年になって、3回の入退院を繰り返した母はすっかり足腰が弱くなってしまった。


病院ではベッドに寝たきりで、リハビリもせず、少しでも動くとベッドのセンサーが感知して看護師が飛んで来るので、遠慮してただ寝てばかりいた。トイレもオムツ対応だった。食事は車椅子で食堂に運んでもらい、自分で食べていた。このままでは寝たきり一直線!だと思った。


退院してまず困ったのが、一人でベッドや椅子から立ち上がれないことだった。食事もトイレも、立ち上がって向きを変えて移動するのに介助が必要になった。ベッドは電動でスイッチ一つで上体を起こすことができるのだが、何度教えても自分ではできなかった。スイッチを押す力がないのだろうか、ベッドはビィと音をたててほんの少し動いただけですぐに止まった。


まず、母に横向きになってもらい、首の下に私の腕を入れ、ぐいと持ち上げて上体を起こし、母の両膝の下に私の腕を入れ、回転させるように両足を床に下ろし、私の右足を母の膝の間に入れ、母の両脇を抱えるように上に引き上げて立たせる。それから目的地(トイレと食卓)まで、母の両手を私の両肩にのせ、私は母の肘を固定して、1,2,1,2と声をかけながら移動する。ベッドからトイレまでが5mくらい。食卓までも5mくらい。トイレから食卓までは休まずに行くことはできなかった。


ある時ふと学習机の椅子が目に留まった。椅子にはキャスターがついているので、座らせて動かせば移動が楽ではないだろうか?やってみたら大成功だった。おまけに座面がくるくる回るので、方向転換もスムーズだった。ベッドから立ち上がらせ、トイレまで押して行き(後で後ろ向きに引っ張るほうが良いと分かった)、便座の前に立たせ(後では一人で立っていられるようになった)用をすませ、椅子に座って手を洗い、ベッドに戻る。食事も同じように椅子で食卓まで行き、食堂の椅子に座り変え、食事を済ませ、ベッドに戻る。


そのうち、椅子に座ったまま廊下の手すりを使って自分の腕の力で移動するようになった。上体を起こす力はまだまだ弱かったが、自分で立っていられる時間が少しづつ長くなってきた。洗面も最初は洗面器を膝の上に置いたり、濡れタオルで顔をふいたりしていたが、立ち上がって顔を洗えるようになってきた。


またまたある時、椅子を押して歩けるのではないかと思った。ショッピングカートを押すと歩きやすいからだ。やってみたらこれも大成功!まだ毎回というわけではないが、一人で移動できるようになった。その代わり足が痛いと訴えるようになった。いままで使わなかった筋肉を酷使しているのだから仕方ないと思うが、本人は「何故足が痛いちゃろか?」と不思議がっている。


退院する時言われた「転ばないように気をつけて」を頭に置きながらも、「動かないと動けなくなる」と少しきつめに歩かせている。筋肉は100歳になっても再生するらしい。母は心臓に持病があるので、少し歩くと「きちい!きちい!」と休みたがる。それもしかたないと思いながら、「あと3歩、あと2歩」と激励している。


今日は一人で玄関まで歩いて行って、外に出ようとしていた。危ない、危ない。 また顔面打撲をするではないか!!


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by kimiyone-chan | 2018-09-11 21:03 | Comments(0)

三姉妹の長女であり、三姉妹の母です。


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